パクリとパロディの境目

最近末次由紀という漫画家のパクリ疑惑がほっとな話題らしいですね。

例によって2chのVIPあたりが発祥っというのがなんだかなぁという気もしますが、まぁそれはさておき、例によってまとめサイトやらがどんどん立ち上がって、比較検証がなされている様子。

そのなかでピッタリ絵が重なるというのが結構あり、トレース疑惑・・・のように記述されているサイトもありますが、10年前fjなるもので著作権問題を散々議論した私の認識からすれば

「トレース(写し取り)だろうが模写(参考にして書く)だろうがパクリはパクリで、ぶっちゃけトレースであるかどうかは問題の本質ではない」


のですよ。もちろんトレースのほうが悪っぽいのは事実ですが、それは程度の問題であって、たとえ模写(目写し)であっても、ページが大量にあればそちらのほうが悪です。

なので、パクリであるかどうかは、前後の流れや、パクラれ具合、全体の流れで判断されるのであって、当然微妙なものは司法の判断ということになるでしょう。

たとえば、私がここでドラえもんの適当な話をそのまま目で見て私のヘタクソな絵で写して書いて出版すれば間違いなくパクリです。それがトレースとかコピー機でコピーしたとかは関係ないのです。

では誰かの書いた漫画の1シーンを一枚パクってあるカットに入れた場合どうなるのでしょうか?先ほどの論理からすれば、トレースしようが、模写しようが、厳密に言えばこれはアウトです。

しかし、作品において誰かの描いた有名なシーンを参考にするというのはよくあることです。それを全て気にしていったらパロディ作品は全て否定されてしまうわけです。アニメや漫画の有名なセリフはよくパロディで使用されます。(当たり前ですが絵だけでなく文章にも著作権があり、それは絵と同列に扱われるべきであると私は思います)

たとえば、最近私がよく見ているアニメ「ぱにぽにだっしゅ!」では最近ルパン三世のアクションシーンがそっくりそのままパロディで作成され放映されました。

参考→http://d.hatena.ne.jp/cesa/20051017

こちらのサイトではこのパロディはべた褒め。私も確かにそう思いました。しかし、このシーンは手の形や弾丸の弾幕まで極めてよく似ているわけです。

この違いはいったいなんなんだろう?と考えるわけです。このシーンがルパンのシーンをトレースしたのか模写したのかどうかはわかりませんが、それは問題の本質ではないはずです。

そこで著作権法の原点に戻って考えてみれば・・

第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。


著作権法問題においては著作権者の権利のみ注目されていますが、この法律はそのような法律ではなく、著作権者の権利を保護するとともに、それを公正に利用し文化の発展に寄与するという重要な目的があるのです。

パロディが認められるとは条文のどこにも書いていませんが、一定の用件を満たせばパロディ製作は認められるべきであると考える人が多数なようです。そしてそれは文化発展の寄与という点に合致していなければならないと思うわけです。

例 Nezumi Mouse

なんといってもパロディは似ていなければ意味がありません。パロディは風刺や皮肉、問題的によく使用される重要な手法です。そして、似るためにはパクらざるを得ないのです。

といったことを演繹していくと、末次氏の問題の本質は

「氏の行った行為が文化発展に寄与する行為だったのかどうか?」

であると思うわけです。トレース、コピー云々はあまり関係ないのではないでしょうか?その点を誤解しないよう注意するべきではないでしょうか?

私はこの問題が誤解により広まり、パロディ製作への圧力が高まることを懸念しています。

さて、この問題ですが、作者自身もパクリを認めたとかで、末次氏の本は全て絶版。入手が極めて困難になっているようです。

パクリ疑惑のあるページなどはネットでさんざん公開されているのですが、そのページだけを見れば確かにパクリのように見えますが、それがいったいどういうった目的、演出、構成で使われたのかを調べるすべがありません。なので、それがパクリなのかパロディなのか私には判断ができないのです。

まぁ、本人も認めてしまった今、私として、これが本当にパクリだったのかどうか調べることに意味があるのどうかと言われれば意味はないような気がするのですが、一応それでも調べてみたいという興味があります。

なんとかならんものですかね。国会図書館ですか?やっぱ。

最後に断っておきますが、私は著作権法の専門家でありませんし、法曹の人間でもありません。あくまで個人的な意見です。

またいまさら言うまでもありませんが、インターネットやTVの情報を丸呑みせず、自分で考え、自分でちゃんと調べ、自分の直感や常識に流されないよう十分考えることが大事なのではないかと思います。

この記事はあくまで私見なので。

その点をお忘れなく。
Posted by issei

カテゴリ: 雑記

コメント一覧

isseiさんが以前言っていたことを当てはめるなら、 表現の自由はあるけれど、それに伴う責任と覚悟が必要で、末次氏にはそれが足りなかったということでしょう。 矢吹健太朗氏という漫画家さんは、同じようにパクリ疑惑やトレス疑惑でネットの一部で過剰なほど叩かれてましたが、 該当作品たる BLACK CAT は、ついにアニメ化されるまでにいたりました、とさ。
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