津軽鉄道の鈴虫列車


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金木の町長が東京からの帰りに上野で芦野公園の切符を求め、そんな駅は無いと言われ奮然として、津軽鉄道の芦野公園を知らんかと言い、駅員に三十分も調べさせ、とうとう芦野公園の切符をせしめたという昔の逸事を思い出し、窓から首を出してその小さい駅を見ると、いましも久留米絣の着物に同じ布地のモンペをはいた若い娘さんが、大きい風呂敷包みを二つ両手にさげて切符を口
に咥えたまま改札口に走って来て、眼を軽くつぶって改札の美少年の駅員に顔をそっと差し出し、美少年も心得て、その真白い歯列の間にはさまれてある赤い切符に、まるで熟練の歯科医が前歯を抜くような手つきで、器用にぱちんと鋏を入れた。少女も美少年も、ちっとも笑わぬ。当り前の事のように平然としている。

少女が汽車に乗ったとたんにごとんと発車だ。まるで機関手がその娘さんの乗るのを待っていたように思われた。こんなのどかな駅は、全国にもあまり類例が無いに違いない。金木町長は、こんどまた上野駅でもっと大声で、芦野公園と叫んでもいいと思った。


と、太宰治の「津軽」に登場する、津軽鉄道に乗ってきました。津軽鉄道は津軽地方の中心都市である、五所川原から太宰治の出身地である金木を経て、中里町までを結ぶ20.7kmの鉄道です。


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津軽鉄道は、秋には鈴虫列車、冬にはストーブ列車を運行することでも有名です。

ストーブ列車は11月16日から運行するようですが、ホームに停車していたので撮影してきました。昔は列車に今みたいな暖房施設がなかったので、普通にあちこちにあったらしいですが、車両の近代化に伴い暖房施設があるのが当たり前になり、次々と引退。今では全国でここだけになってしましました。

このストーブ列車はTVの旅番組などでたびたび登場しますが、存続の危機にたたされています。車両の老朽化や運行コスト等の問題などなど・・

ずっと運行して欲しいのはやまやまですが、問題は山積みのようです。なんとかならないものでしょうか・・

18きっぷが余ってたので消費しようとしたのですが、川部から五所川原方面の列車は、6時台にある2本を逃すと、次は9時台までないなど、本数があまりにすくないんで、青森から五所川原までバスを利用しました。 JRだと五能線乗り換えで950円。バスだと青森から直行で1000円です。青森から五所川原に行くには大釈迦付近から国道101号線で行くので時間もあまりかわりありません。(川部まわりだと遠回り) なので青森からだと本数も多いしバスのほうが便利です。3人しか乗ってませんでしたが・・・ ちなみに、鈴虫は昼間で明るいせいか鳴いていませんでした。。。_| ̄|○

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津軽鉄道では全線タブレットを用いた閉塞が行われています。これは、タブレットと呼ばれる通行手形を持っていない列車はその区間を走行することが出来ないという運行方式で、主に単線区間の衝突を避けるために使用されています。 手形を受け取った列車は次の交換駅で手形を駅員に渡し、その先の通行手形を駅員から受け取り発車します。タブレットは同時に1つしか取り出せない仕組みになっており、駅員が受け取ったタブレットをタブレット置き場に置くと、また次の列車を発車できるという仕組みになっています。 のぼり、くだりの列車がそこで交換するならば、そのままタブレットを交換してしまえば列車はさらにその先に進むことができます。のぼり、くだりの本数が一致しないと片方にタブレットが溜まってしまいますが、そういう場合は陸送するそうです。 ちなみに、金木から津軽中里まではとても珍しい棒状の票券というものを使用した閉塞をしています。wikipediaによると全国で2カ所しかないそうです。写真を撮ろうとがんばりましたが、上のような写真を撮るのがやっとでした・・・駅員のもっているハンマーのように見えるのがそうです。 最近では田舎のローカル線でも信号機を用いた自動閉塞がぞくぞく導入されており、昔ながらのタブレットを用いた閉塞をしている路線はちゃくちゃくと無くなっています。太宰のセリフではないですが、津軽鉄道は確かに「全国にもあまり類例が無いに違いない」路線のようです。 本日の行程 青森>(弘南バス)>五所川原>津軽五所川原>津軽中里>津軽五所川原>五所川原>川部>青森

Posted by issei

カテゴリ: 旅行記