ほぼ雑記的メモ
三角関数使って表記すれば半径1の円に内接する正N角形の一辺の長さは
\[2\sin(\pi/N)\]
なんですが、この値は具体的に加減乗除と累乗根を使って表すことができます。 それを計算してみようという試み。
\[2\sin(\pi/3) = \sqrt{3}\]
\[2\sin(\pi/4) = \sqrt{2}\]
\[2\sin(\pi/6) = 1\]
ここまでは図を書けば殆ど自明です。正8角形、正12角形は半角の公式を使うと比較的簡単に求まります。半角の公式とは
\[\sin^2(\alpha/2) = \frac{1−\cos\alpha}{2}\]
です。
\begin{eqnarray*} 2\sin(\pi/8) = 2\sqrt{\frac{1-\cos(\pi/4)}{2}}\\ = \sqrt{2-\sqrt{2}} \end{eqnarray*}
\begin{eqnarray*} 2\sin(\pi/12) = 2\sqrt{\frac{1-\cos(\pi/6)}{2}}\\ = \sqrt{2-\sqrt{3}} \end{eqnarray*}
根号の中に根号になりますね。この先、16, 32, 64または24, 48, ..と増えていっても、半角の公式でどんどん数が求まっていきます。もちろん増える度に根号は深くなります、こんな風に辺の数が増えていくと、根号がどんどん深くなると予想されるのですが、正10角形は比較的シンプルな値になります。
\[2\sin(\pi/10) = \frac{-1+\sqrt{5}}{2}\]
となります。正5角形よりシンプル。 実は正10角形は正5角形の作図がどうやって行われるかが理解できていると簡単に求めることができます。
一般に$x^n-1$の根を複素平面にプロットすると単位円に内接する正n角形の頂点となります。正10角形をプロットすると図のようになり、 一辺の長さは図の$P_1Q$になりますが、 これが$P_1+P_4$と原点Oからの距離($|P_1+P_4|$)に等しいことが見て取れると思います。
$P_1, P_2, P_3, P_4$は正5角形の頂点、すなわち$x^5-1$の根です。これには1という自明な根があるので因数分解ができて、
\[ x^5-1 = (x-1)(x^4+x^3+x^2+x+1) \]
この第2項
\begin{eqnarray} x^4+x^3+x^2+x+1 \hbox{ (★)} \end{eqnarray}
の根ということになります。その根の1つを$\zeta$とすれば、すべての根は
\[ \zeta, \zeta^2, \zeta^3, \zeta^4 \]
となります。また$\zeta$は★の根ですから$\zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4 = -1$になります。 ここでは$P_1=\zeta$とします。 今
\begin{eqnarray*} X = \zeta + \zeta^4\\ Y = \zeta^2 + \zeta^3 \end{eqnarray*}
とすれば
\begin{eqnarray*} X+Y = \zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4 = -1\\ XY = \zeta+\zeta^2+\zeta^3+\zeta^4 = -1 \end{eqnarray*}
ですから($\zeta^5 = 1$に注意)X, Yは
\[ x^2 + x - 1 \]
の根。よって
\[ X = \frac{-1 + \sqrt{5}}{2} \]
となります。Xが$P_1+P_4$なのは言わずもがなです。これから次の有名な問題を証明できます。
\[ 2\pi > 10 \times \frac{-1 + \sqrt{5}}{2} = 6.180... > 6.1 \]
模範解答では、正8角形や正12角形を使うものが多いわけですが、こちらの方がより根号の数が少なく計算が簡単ですね。$\sqrt{5}=2.236...$というのを知っていればいいわけで。
なお余談ながら
\[1: |P_2+P_3|\] \[|P_1+P_4|:1\]
はいわゆる黄金比(1:1.618....)です。こんな計算のやりかたを知らなくても正10角形には黄金比が隠れていることを知っていれば3.05より大きいのは直ぐにわかるでしょう。いきなり正10角形の辺の長さは黄金比1.618:1だから・・・と書き始めたら正解になるかどうかはわかりませんが。
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