クリフジと長吉

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<真うかつエピソード2633>
 前に「ダービータイム2006」で牝馬で日本ダービー勝ったよ~んという自慢話をした時にチラっとだけ触れましたが、今を去ること60数年前、クリフジという名馬がおりました。自慢話の通り、現実世界において日本ダービーこと東京優駿を勝った唯一の牝馬です。ついでに言うとこの馬はオークス馬でもあります。現在のJRAのレース日程では、オークスとダービーは連続で開催されるので、この開催日程であり続ける限り、事実上この二つの冠を取ることは不可能です。クリフジはこれ以外に菊花賞も取っていますが、2位以下にダービーは6馬身、オークスは10馬身、菊花賞は測定不能の大差と、ぶっちぎりの強さを発揮し、生涯成績11戦11勝の負け無し。今でも「最強の牝馬は何か」と問われてこの馬を挙げるオールドファンも多いことでしょう。

 と、これほどの名牝にもかかわらず、主戦騎手であった前田長吉はかなり謎の多い人物です。クリフジでダービーを勝った時は、戦時中の人材不足からまだ騎手見習いだったそうで、この時の年齢は間違いなく歴代ダービー騎手の中でもっとも若いはずなのですが、20歳とも21歳とも言われハッキリしません。
 その後長吉は出征、シベリアで抑留されてそのまま帰らぬ人になりましたが、今日の地元紙(言い忘れてましたが長吉は現在の八戸市の出身です)に載っていた記事によると、身元不明だった6柱の遺骨のうち、一つが長吉のものと判明したそうで、変わり果てた姿とはいえ、近いうちに60年ぶりに日本に帰って来れる事になれそうです。死亡時の年齢は23歳だったそうなので、逆算すればようやくダービー勝利時の年齢もハッキリすると思われます。

 ところでその後クリフジは繁殖牝馬となり、その血は牝系から脈々と今の競馬界にも受け継がれております。そして24歳で老衰により天寿を全う。おそらく主戦騎手より長生きした競馬馬はこの馬ぐらいのものでしょう。